ナノプレミアムエッセンスのチラシが凄い

きっかけはこのチラシ

きっかけは、2008年の11月中旬ごろに新聞折り込みで入った化粧品のチラシです。その名は「ナノプレミアムエッセンス」。いろんなところが凄いです。

スタンレー・コーエン博士のEGFが凄い

まず、「スタンレー・コーエン博士が発見し、ノーベル医学生理学賞を受賞した1g2500万円の『EGF』高配合!」と謳っている部分が凄いです。

「EGF」を調べてみると、「上皮細胞成長因子(epidermal growth factor)」というらしく、細胞の成長、増殖に関係する物質らしいです(参考サイト)。そんな物質でガンにならないか気がかりですが、きっとだいじょうぶなんでしょう。

EGFはスタンリー・コーエン博士達が発見し、博士はノーベル賞を受けています。ちなみに、博士のお名前は「Stanley Cohen」で「スタンリー・コーエン」と表記するのが一般的なようですが、美容品関係でEGFが出てくるときはチラシと同じように「スタンレー・コーエン」と表記されることが少なくありません。業界用語のようです。

EGFはとても高価らしい

チラシによるとEGFは「1g2500万円」らしいです。本当でしょうか。

生化学系の物質を扱っているCSTジャパン株式会社に希望納入価格が出ていました。濃度100ug/mlのヒトEGFが100ulで26,000円です。単位で混乱するけれど計算すると、1gのEGFを入手するには…26億円!。チラシの金額から100倍近い値段です。

フナコシ株式会社にも価格が出ていて、こちらは純度99%のヒトEGFが50ugで14,000円。1gでは2億8千万円です。桁が一つ違っていますが、いずれにしても高額です。

物質自体の価格がいくらであろうと、肝心なのは製品に含まれる濃度です。EGF配合の化粧品はどうも流行りらしく、「1ppmのこだわり」とか「業界初2.5ppmの高濃度」とか書いてあります。仮にナノプレミアムエッセンスに濃度1ppmで配合する場合を考えてみましょう。

1ppmとは「百万分の一」という意味です。ナノプレミアムエッセンスは1本が20mlですから、その1ppmは0.00002ml(=0.02ul)です。計算を単純にするために水と比重が同じと考えると、EGFの必要量は0.00002mg(=0.02ug)。その量だと、1gが26億円のEFGでさえ52円です。もしチラシどおり1g2500万円ならば、濃度1ppmで0.5円です。お安い。

「ppm」という単位はこれ程に細かい値を扱う単位なのですね。その上、チラシには「高配合!」としか濃度表示らしきものがないので、「1g当たり2500万円」だろうと「1g当たり26億円」だろうと、実は何の意味もありません。

ちなみに日本EGF協会によると、濃度と共に「生物活性」という要素も重要らしく、いくら高濃度配合を謳っていても生物活性が低くては意味がないらしいです。なかなか難しい物質なのですね。

総院長のお墨付き

次に気になるのが、とある病院の総院長の写真とコメントです。この化粧品を推奨しているように見えるこの方は何者なのでしょう。

ネットを調べると、美容形成外科のチェーン病院の総院長に間違いがないことがわかりました。病院のHPには、チラシと同じ写真が掲載されていました。

※2009/1/4時点の病院HPより

ところが、病院のトップページにはこんな文言が。

※2009/1/4時点の病院HPより

2008年11月11日、新聞折込チラシ広告において、無断で●●●ビューティクリニックの名称及び 総院長 ●●●の名前を語り、化粧品の販売を行なっている業者がおります。
当院および●●●グループとは、一切関係がございませんので、お気をつけ頂けます様お願いいたします。

ナノプレミアムエッセンスのチラシが折り込まれたのは2008年11月中旬でしたので、ナノプレミアムエッセンスのチラシを指しているように思えます。

チラシの総院長コメントを良く読むと、美肌維持の一般論に過ぎず、ナノプレミアムエッセンスにもEGFにも全く触れていません。

おそらく、総院長がなにかの媒体で公表した一般論が無断掲載されてしまったか、あるいは全く他者の文章なのかもしれません。いい迷惑です。

死の淵からの生還

このチラシで最も目を惹くのは、シワとシミがひどい写真と美肌写真の対比です。一番すごいと思ったのは、笑顔の素敵な田中美枝さんの写真です。

左下の写真のシワが尋常じゃありません。文面では「・・・私は同年代の女性よりシワは多く、頬もたるんで血色も悪くて・・・」と書いてありますが、入院すべきレベルに見えます。

そんな田中さんも「・・・わずか1ヶ月で、まるで生まれ変わったかのような肌質に!」なったそうです。ものすごい効き目です。チラシで販促しているレベルじゃありません。

どの写真にも「ナノプレミアムエッセンス使用前」「使用後」とは書かれていません。文章も、使用者の体験談を掲載しただけで、ナノプレミアムエッセンスの効能を謳っているわけではありません。薬事法をかわしています。

ちなみに健康食品であるアガリスクの効果を謳った本の体験談を捏造したとして、ライターが書類送検されたこともありますので、やりすぎると捕まります(参考サイト)。

発売元は何者か

発売元らしい「エムケイクリエイト」で検索しても、ピッタリの情報には出会えません。そこで、グーグルマップを使って住所から調べました。

「エムケイクリエイト」の名前は見当たりませんが、同じ場所にペットショップの名前があります。このペットショップの名前を検索すると、ホームページが見つかりました。

ホームページ上では化粧品について一切触れられていません。チラシのフリーダイアルも見あたりません。

チラシ上で郵便番号の記載が2ヶ所にあり、一方の「420-0XXX」という番号表記はペットショップのホームページ上の郵便番号と一緒です。住所が一緒なのだから当たり前です。でも、チラシのもう一つの郵便番号であるはがき部分の番号は「420-8755」となっていて、下4桁が全く異なっています。

下4桁が異なるのは、日本郵便の「大口事業所個別番号サービス」を利用しているためです。これは、たとえば「420-8755」という郵便番号だけ書けばはがきが届くというサービスです。

日本郵便のホームページでは事業所の個別郵便番号も検索できるのですが、ヒットしませんでした。おそらくエムケイクリエイトは非公開を希望しているか、サービス利用自体を既に止めたのかのいずれかでしょう。

チラシの住所と同じところにペットショップとはどういうことなのでしょう。ペットショップのサイドビジネスなのでしょうか。ペットショップ自体が販売しているのかもしれないし、ペットショップに届いたはがきを別の所にあるエムケイクリエイト所在地に転送するだけの役割なのかもしれません。

他の商品も扱っている

さて、チラシにはエムケイクリエイトのWEBアドレスが“http://www.mk-create.jp/nano”と示されています。

受注以外の機能を一切排除した、大変シンプルなデザインです。

これを見ると、エムケイクリエイトはどうやら「プレジール」という製品も扱っているようです。この製品もなかなか侮れないようで、ご関心の向きはお調べください。

こういう場合、トップサイトである“http://www.mk-create.jp/”にもアクセスしたくなるわけで、こんな感じでした。

「Revive(“再生”?)」「パーシャルダイエット(“部分痩せ“?)」「ハイパーバスト(???)」という素敵なお名前の製品も販売しています。どうも輸入品らしいのですが詳細はわかりませんでした。

エムケイクリエイトを探る

インターネットには特定のアドレスを誰が手続きをして取得したのかが分かる「WHOIS」というサービスがあるので、“mk-create.jp”というアドレスは誰が取得手続きをしたのか調べました。

Domain Information: [ドメイン情報]
[Domain Name] MK-CREATE.JP
[登録者名] 小林 広一
[登録年月日] 2006/01/20
[有効期限] 2009/01/31
Contact Information: [公開連絡窓口]
[名前] 小林 広一
[Email] webmaster@ayay.co.jp
[郵便番号] 151-0064
[住所] 東京都渋谷区
上原2-5-20-5F

試しにメールアドレスのアットマーク以降にwwwを付けて“http://www.ayay.co.jp”というアドレスにアクセスしたところ、「エーアンドワイ株式会社」という企業のホームページが現れました。

同社の事業内容には「化粧品の企画・製造・卸販売 / 健康食品の企画・製造・卸販売」とあります。繋がりがあるのかもしれません。

ここまでで探索は終了です。

美容やサプリは熱気に満ちている

いろいろ調べる中で、「化粧品や健康食品やサプリメントや美容・痩身用品の世界は何でもあり」ということがわかりました。製品の効用は二の次の、一攫千金を狙った山師達のエネルギーが渦巻いていました。「効いている気がする」の「気がする」部分でお金を儲けようといういかがわしさに充ち満ちています。

今回のナノプレミアムエッセンスも、写真のシミのやりすぎ感や病院長の無断利用と思われる部分を考えると、作りが荒いです。安く作って、一気に広げて、引っかかった客に売りつけて逃げる、というストーリーが思い浮かびます。倫理観を脇に置けばとても儲かる世界なのかも知れません。