カラスと別世界に行きそびれた話

スーパーからの帰り道。買い物袋を下げてぽつぽつ歩いていると、歩道の真ん中に黒いものが落ちていました。フットボールくらいのそれは、カラスの亡き骸でした。くちばしと二本の足が真っすぐ空を向いて、転がった置物のように固まっていました。

自転車の学生さんが通り過ぎ、すぐ脇を車が走ります。普通の風景なのに、目の前には固まったカラスの死体。上には何もありません。どこからか、ポトンと落ちてきたのか。

ヒントに違いない。

こういう場合、ヒントに違いありません。足首に手紙が巻いてあって、
「気をつけろ、彼が見ている。」
なんてメッセージと一緒に、謎の番号が書いてあるのですね。番号を使うと扉が開いて、次のセクションに進めるのですね。

残念ながら、紙切れ一つ付いてませんでした。ヒントではない模様です。

歩道の真ん中にあっては誰かに踏まれてしまうかもしれません。亡き骸とはいえかわいそうです。やや不気味でしたが、街路樹の根元にそっと移して、家に帰りました。意外に重かったです。

こういう場合、夢に黒服の女性が出てきたりするのですね。
「ありがとう、地上に落ちた私を救ってくれて。私は人を誤解していました。」
なんて言われて、天空と地上の間で長く続いた戦いが終わるのですね。おめでとうございます。救ってないけど。

残念ながら、その夜はスポンジ・ボブが「あわわわわわ」と笑う夢を見ました。ごめん君じゃない。多分、息子君の影響です。

翌日、街路樹の根元にカラスはいませんでした。天空に帰ったのでしょう。

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