「牛乳は体に悪い」主張の背景にあるもの

「牛乳 カルシウム」をキーワードに検索をすると、「牛乳を飲むと骨が弱くなる」とか「牛乳は本当に健康飲料?」とか、「牛乳は悪」であることを主張するサイトが比較的上位に出てきます。曰く、

・他の食品に比べ牛乳のカルシウム量が高いわけではない。
・牛乳に含まれるリンが骨からカルシウムを溶け出させる。
・牛乳に含まれる乳糖は白内障を引き起こす。
・牛乳は骨粗しょう症の予防にはならない。牛乳を多く摂取している北欧人に骨粗しょう症や骨折が多いことが証拠だ。

などなど。これらは「牛乳有害説」と呼ばれています。

牛乳有害説を調べていたら、牛乳は悪と主張する出版社と農林水産省とのバトルの様子を見つけました。

平成13年の出来事。新潮45という月刊誌に掲載された「牛乳はこんなに身体に悪い」という記事に対し、記事内容が事実と異なるとして農林水産省が申し入れました(実質は抗議)。出版社と記事執筆者から回答を得ましたが要領を得ず、再度抗議。その際、農水省が申し入れ書を持参時に牛乳業界団体関係もついて行ったらしく、出版社側といざこざがあったようです。出版社側は論点といざこざをすり替え、結局、記事自体の事実関係の追求は終了してしまいました。

詳細は以下のページで見ることができます。実サイトは消えていますが、WEYBACKMACHINEのログサイトに残っていて、サイトの中程に記載があります。

農林水産省サイト 各種報道に対する農林水産省の考え方 新潮45 6月号掲載記事(「牛乳はこんなに身体に悪い」)に対する農林水産省の申し入れ(リンク)(WEYBACKMACHINE リンク

食品成分表を管轄する文部科学省でもなく、日本人の食事摂取基準を管轄する厚生労働省でもなく、農林水産省が抗議をしているのは、おそらく牛乳生産者との関係があるのでしょう。

新潮45の記事内容はひどいものです。論理的に破綻していて、フード・ファディズムの典型です。事実誤認である点は農水省の申し入れ書にこれでもかと書いてあります。

さて、「牛乳有害説」の誤りを指摘するWEBサイトも多くあります。牛乳有害説のどの辺が間違っているのかということについては、この新潮45の記事と関係して説明している森羅情報サービスさんのこちらのページ(リンク)(WAYBACKMACHINE リンク)をご覧ください。

牛乳有害論を主張するサイトを見ていると、背景に共通した価値観が見え隠れしています。

1.「戦前までの日本食は優れていた。戦後はアメリカ主導で食の欧米化が進み、牛乳推奨の機運もその一環であった。現代の社会問題を解決するには、魚食、菜食を中心とする戦前の食生活への回帰が必要だ。」という「昔は良かった論」。
2.「牛乳は子牛の為に出るものだから、人間には向かない。牛が血液から作り出すものだから、牛の血を飲んでいるのと同じ。」という「生理的嫌悪感助長論」。
3.「自然が良くて人工は悪い。」という「自然賛美二元論」。

他にも「現代栄養学を否定しながら科学的合理性を持った説明をしようとする矛盾」や「一定の団体が利益を得るために事実が隠蔽されているという陰謀の存在」などを感じ取れるサイトもあり、興味深いです。

科学的な事実が歪められていて、相関関係と因果関係が混同されているような説得力を持たない主張の中に共通した価値観が見え隠れするとき、その価値観は合理的な考えを妨げる力がある、と感じます。前述の価値観は全て合理的な考えを妨げる力があると思います。

いろいろと調べました結論としては、牛乳を飲んでお腹がゆるくなる方でなければ、毎日コップ一杯の牛乳とそこそこの食生活が良いと思います。