1年間に4万種が絶滅してるって本当?

「環境危機をあおってはいけない」という本があります。ビョルン・ロンボルグ氏の大著です。

環境保護論者から目の敵にされている本ですが、環境系専門家からの批判内容が真っ当なものが多く、裏を返せば専門家が真っ向勝負をしてくる程の土俵にある本なので、僕はこの本の主張をおおむね信じています(技術の進歩に寄せる期待が過大すぎる気はしますが)。

さて、「年に4万種が絶滅している」という試算はネットの各所で見受けられます。「一日に100種以上が地球から消えている」という表現も良く見ますが、これは年4万種を日単位に換算し直した値です。

ところが、ロンボルグ氏は著書の中でこの情報の根拠がほとんどないと主張しています。

曰く、4万種という数値は、ノーマン・マイヤーズという研究者が1979年に発表した「沈みゆく箱船」という書籍に登場したのが始まりらしいのです。この中で、この4万という値は「仮に・・・今世紀最後の25年感で100万種の絶滅が目のあたりにされると想定しよう」という著者の想定に基づいているといいます。25年で100万種だから、単純に1年平均で4万種です。想定根拠は、伝聞等から得たマイヤーズ氏の感覚のようです。

どうしてこんな根拠薄弱な数字が一人歩きしたのでしょう。残念ながらロンボルグ氏の本ではその点の考察がありません。1979年という時代を考えると、世紀末を前にした、どちらかというと暗雲立ちこめる未来を予想しがちな世相が促進剤だったことは間違いないと思います。

「沈みゆく箱船」の強烈な危機感は、同時期にアメリカ国務省が出した未来予想レポート「西暦2000年の地球」にも取り込まれ、世界に広がっていったようです。

実際の絶滅スピードはずっと小さいという報告は、国連の報告に含まれているようですし(UNEP Global Biodiversity Assessment 1995)、国連の最近の報告では、個体数や絶滅危惧種は増えてるけれど、絶滅種が増加しているとは言っていません(環境省 地球規模生物多様性概況第3版 リンク)。

人間が野放図に自然環境や生態系を壊して良いはずはありませんが、どれ程のコストを掛けてどれ程の生態系を保存するかは、できるだけ実証的な値をベースに政治的な判断をすべきでしょう。そもそも地球全体の種の数の推定が難しいので「本当は1年の絶滅種は●●種です」と値では言い難いとは思いますが、差し当たり「4万種」という値は、状況を過大評価したものと考えて良いように思います